富澤麟太郎「雑記帳から」
雑記帳から
富澤麟太郎
剃刀のやうな講話は耳からでなく目から入れる
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木が花を咲かすやうな心持で芸術をやる。
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恋愛は生きるためにやる
その他のもの(労働)は食ふためにやる
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彼はすつぽりと心をあけて
さて愛すといはれた時
その瞬間からその女を嫌つて了つた。
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牛肉を食ふたが故にその者は牛にならないと同じやうに作品もさうさるべきか大切。
病者はたべない。
いやたべても缼陥のある者は吐き出す。
『文章往来』大正十四年三月号掲載